長い一日。
時の子は笑った。

「思生は死んでしまうの?」

「死にはしない。もう一度手術をして一命をとりとめた。」

よかった思生が死んでしまわなくて…

「でもその手術をしてから、意識不明で一度も目覚めてない。そんなことも覚えてないの?」

呆れた声が私に語り掛けた。

「当たり前でしょ?私は思生じゃない。私は空菜」

時の子は、目があるはずであろう場所を大きく見開いた。

シイナに名前をあげたのは私。

━━…私はお姉ちゃん?

「冗談でしょ?だって空菜は…」

「冗談じゃない。私は空菜。そんなに信じられないなら目を入れてよく見てみなさいよ」

時の子は、目に少し手を当ててしばらくすると手を離し、ゆっくりとまぶたを開いた。

青く澄んだ目をした時の子は、にっこり笑った。

「シイナ。ククク。おもしろいことしてくれるじゃん。じゃあ、空菜?あんたならどうする?」

時の子は、ゲームを楽しむように言う。

「私は、思生を助ける。」

今度は私が思生を助けるの。

「ふーん?でも、アンタが死ぬ現実はかわらないよ?」

「それでもかまわない。私はベストをつくす」

時の子は、ふふんと鼻で笑って消えた。

「思生。今、お姉ちゃんが行くからね…」


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