長い一日。
━━そうだ。
彼女の精神はまだ体を離れていない。
これは思生が時の子に会う前の時間。
覚えてなくて当然なんだ…
「じ、じゃあお姉ちゃんは?
お姉ちゃんの顔はわかるでしょ?」
「私にはお姉ちゃんなんかいない私を忘れてしまうような人は私のお姉ちゃんなんかじゃない!!」
思生を忘れてる?
そうだ。なんで私は思生の存在を知らなかった?
思生は10年もここで独りぼっちだったのに…
私よりも、もっともっと寂しくて助けを求めていたのに…
本当に助けなければいけない人になんで私は気付かなかったんだろう?
こんなに近くにいたのに
いつも笑っているから大丈夫だと安心してしまっていたの?
私はバカだ…
笑っているから強いんじゃない。
笑っているから平気なんじゃない。
強い人ほど傷だらけで、我慢しているんだ。
思生はそんな自分に気付かれたくなくて必死に笑っていたんだ。
強がって笑って、他の人を助けていたんだ。
「ごめんね思生。ごめん」
「離してよっ!」
ゆるんだ私の手を振りほどき、思生は私と向かい合うようにたった。
「私は、アンタをお姉ちゃんだなんて認めないから。アンタみたいな偽善者なんて大嫌い!!」