長い一日。
「周りから見ればあんたは私でしょ?
変に見えるから気を付けてくれない?」

「ふーん。じゃあ、その上から目線やめてくれない?」

少し嫌味まじりで私の口調を真似てみせる「使者」。

「…まぁそれでいいや。
あんたは何者?」

「言ったでしょう?
私はあんたを迎えに来た使者だって」

「そうじゃなくて呼び名くらいあるでしょう?」

「使者」は黙った。

まさか呼び名がないのか?

悩んだ顔をする「使者」。

なんだかとてもかわいそうになってきた。

「もう、いいよ。あんたのことはシイナって呼ぶから」

「シイナ」の顔が笑顔になった。

「ありがとう!あっでも何でシイナなの?」

「私のもう一つの名前。
名前を付けるときに使われなかったほうなの。」

シイナはきょとんとして、もう一つ私に聞いた。

「なんで使わなかったの?」

「お母さんが感じたんだって。
『この子はシイナじゃない。
空のように広い心をもち、菜の花のようにみんなをこっそり見守る
優しい笑顔の子になる』って」

「いい名前だね。」

「そうかな?私はお母さんが望むような子には育てない。」

「そんなことはない。
お母さんの願い。叶えに行こうよ!」

シイナが私の手を引く。

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