長い一日。
お母さんの願いを?

無理だよ。だって私は…

「そんなの無理に決まってんじゃん!」

私はシイナの手を振りほどいた。

「…なんで?」

「だって私はもう死ぬもん!!今日は私の命日。私に残された最後の日。」

「だから行くんでしょ?」

━━ …え?

私はシイナの顔を見た。

シイナは笑っていた。

「最後ならなおさらだよ。
それに人は誰だって間違える。お医者さんが絶対正しいわけじゃない。
お医者さんは神様じゃないんだから。」

シイナはもう一度私の手をしっかりつかんで歩きだした。

…最後だから?

最後だから行くの?

人は誰だって間違える。

それざゃあ、最後じゃないかもしれないの?

もし、そうなら…

もし最後じゃないなら私は…

生きたい。

「私にできるかな?」

「できるよ。」

シイナの力強い言葉は私に勇気をくれる。

私にできるなら…

「私。やってみる…!」

シイナに引っ張られるんじゃなくて、私はしっかり自分の足で歩きだした。

シイナに負けないようにしっかりシイナの手を握り返して。


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