Nostalgicな祭りのあとで
陸は恐ろしくなり、大樹との距離を縮めた。

大樹は何も言わない。

足も止めない。

「うっ!」
つんざくような異臭が、陸の粘膜を襲った。

辿り着いた場所は沢だった。
沢だった場所、と言った方が正しい。

異臭を放つドロドロと黒光りした湿地帯が、山の側面に沿って広がっている。

「た、大・・樹・・・っ、これ。」

「昔、ここには冷たくて綺麗な山水が流れてた。少し先には川があって、ハヤや岩魚が住んでたんだ。もう、いないけどね。」

どうして、と唇が震えた。

かすれて言葉にならなかった。
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