Nostalgicな祭りのあとで
「山本。」

白いカーテンをくぐると、サンタみたいな髭面がほころんだ。

こんな風に名前を呼ぶのはこの棚橋くらいだ、とやまじいは苦笑いした。

「何度きても嫌だな、この臭いは。」

桜子の最期が、蘇る。

「そういぃなや。茶飲むか?」

イヤ、と体を捻った棚橋を止めた。

白いリノリウムを鳴らし彼のベッドのそばに座った。

「検査は?」
「上々。一ヶ月もすれば退院さぁな。」

やまじいは皮肉げに微笑んだ。

「憎まれっ子ナントカだな。そうか。」

言葉とはうらはらに、目尻が優しくしぼんだ。
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