Nostalgicな祭りのあとで
棚橋は窓枠にもたれながら長い息を吐いた。

「自然から遠ざかるほど、人は何かを失っていく。その中には大事なモンもあるはずでの。学校を巣立った町の衆を見て来たわしの、小さな気持ちじゃがの。」

二人は、子供の頃の風景を回想した。

何にも、便利な物がなかった頃。

人々の間にあったのは、心と温もりだった。

思いやりがたくさん転がっていた町。

大人みんなで子供達を育てていた、それが当たり前だった時代。

「今は・・知る者も少ないが、あの頃にはあの頃のよさがあった。嘘も見栄もいらない。確かに不便だけれど、この手には無限の未来と夢があった。」

やまじいは、一瞬白昼夢を見た。
桜子の白い手が、がさついた手を包み、何かを囁いている。
懸命に何かを訴えかけるかのように。
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