Nostalgicな祭りのあとで
「腹の中に抱えとるもんが大きいほど、お前がはぐらかすほど、身近なもんが不安になる。・・・十分知っとろうがね。」

守の脳裏に妻の顔がよぎった。

「ましてや子供は敏感。訳も分からず感じた不安は、不信感となって心を攻撃すんじゃ。ホレ!」
バフンとバスタオルを押し付ける。
「お前も風呂行っといで。」

まだ手をつけたばかりの夕飯を前に追い出され、守は風呂場の前に立った。

・・・長い沈黙。
陸は体を洗う父に背を向け湯に浸かっていた。

「陸、すまん。・・お前に、言っとくことがある、んだ。」

長い長い話だった。
不器用な父親が言葉を探しながら話した本当の真実。

湯に長居しすぎたせいで、途中で陸はひっくり返ってしまった。
フワフワと揺れる夢のような感覚の中で、陸は幸せな夢を見た。

目覚めた時は思い出せなかったけれど、とても幸せな気持ちだった。
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