Nostalgicな祭りのあとで
ザザザザザ・・・ッ!
草むらを掻き分けていく。
大樹と陸は全力で走っていた。

その頃、勇気は舞台にいた。
七菜の合図で鈴を鳴らす。
シャンシャンという音が次第に高くなり、空へ上っていく。

「・・・町は、皆さんの思う以上に、死に瀕しています。山周辺の土と水から、微量ながら有毒な成分が検出されました。原因は山の不法投棄です。特に、厳重な処理を義務付けられた産業廃棄物が、土壌と河川を犯したことが最悪の事態を招いたのだと推察されます。」

雨でゆかるんだ土に足をとられつまづく。
けれど、二人は走り続けた。

笛の音と太鼓の音にあわせ、子供達がドン!ダン!と足を踏み鳴らす。
リハーサルなので舞台はシートに覆われているが、その音は人の心を揺り動かした。

「町の中心では、実感がわかないかもしれません。けれど、このままでは着実に被害は広がるでしょう。・・私にも息子がいます。子供達に残す町が、このままでいいはずがないんです。」

< 84 / 109 >

この作品をシェア

pagetop