ドラマチックスイートハート
「どうしますか? ウチには台車がありませんし、かと言ってこのまま無理に帰ると車ボディも痛めますよ。宜しければこちらに置いて、明日取り来ると言う方法もありますが……」
「え…………いいんですか?」
少し悩むものの、つい良いのか聞いてしまう石垣。
悩むのは帰る方法と、途中寄る天崎の事だ。
「いいですよ、もう少しで今日は閉店になりますし。タイヤ、取り寄せときますか? 今から電話すれば、明日午前中にでも履き替えられますよ」
成る程。
うまい商売方法だ。
一晩ここに置かせて違う店でタイヤを買うわけにもいかないので、了解した。
「宜しくお願いします」
石垣は店員の指示でスタンドの端に車を止め、天崎の携帯だけ持ち外に出た。
「タクシーもいります?」
親切心で聞いてきたが、そこまでは必要ない。
ここからなら電車がある。
「大丈夫です。近くにありますので。ありがとうございました、また明日来ます」
そう言って石垣はスタンドから歩き出した。
何ともついていない。
こんな日は早く帰るに越したことはない。
天崎の携帯を握り、考えた。
……どうする?