ドラマチックスイートハート
飛び出したのは天崎の居場所ではなく、反対方向。
携帯も渡さず……
いや『渡せず』走り去ってしまう。
どうなってるか分からない……
今、どんな顔して走ってるか、自分でも分からない……
走る。
走る。
どこまでも……
そして、大通りまで出てもまだまだ走る。
もっともっと……
苦しくなるまで……
走れなくなるまで……
「ハア……ハア……」
ピタッと止まった。
疲れたからではない。
あれだけ走ったのに、呼吸がほとんど乱れていない。
止まったのは、突然感情が現実味を帯びてきたからである。
天崎に恋人がいた。
天崎に恋人がいた。
天崎に恋人がいた。
最悪な現場に居合わせたのか?
何故自分がそんな目に……
物凄い虚しさと、津波のように押し寄せる手前の悲しさが、感情を爆発させず停滞しているのが分かった