ドラマチックスイートハート
『俺は由奈が好きだ!』
……今のは石垣が言ったでも、思った言葉でもない。
どこからか聞こえてきたのだ。
ゆっくりと横を向くと、遅くまで灯りを付けている電気ショップのウィンドウガラスに、6×6の計36台のテレビが飾られてるのが目についた。
その映し出されている映像……
それこそ、前に撮影したドラマパンドラのボックスの放送であった。
その叫んだ言葉。
由奈が好きだと、今石垣が一番言いたい言葉を『ドラマの人』は言っていた。
後ろから抱き締められた天崎は、苦しいといいながらも振り返りソイツを強く抱き締め返す。
『でも……気持ちは伝わったよ。もう私迷わないから! 私もコウが好き、誰よりも好きだから!!』
……コウが誰よりも好きだから……
何だ……コレ……
石垣は、その場で涙をボロボロ流す。
いくら夜遅いとは言え、まだまだ活気あるここは決して人通りが少なくない。
それでも気にしない程に、涙を流すのだ。
ドラマの向こうと……こちらの世界は違う……
違うんだよ!!!!!
溢れる想い。
自分が天崎を抱き締めて、天崎も自分の事を好きと抱き締め返す。
そのストーリーが今どれほど辛いか……
夢物語が悲しく、辛く、街中にこだました