ドラマチックスイートハート
「そうだったんだ、大変だったね」
「ああ、それじゃあまた後で」
軽く愛想笑いをし、不自然にならないように天崎と会話を無理矢理終わらせ、その場から逃げ出した。
会話する度、心が痛む。
その笑顔を見る度、今まで以上に愛おしくなる。
こうして隙を見て天崎に話しかけられないように、スタッフやADなどと無駄な話や打ち合わせをして見せて、知らず知らず大きな壁を作っていた。
もう絡むのは天崎ではなく由奈だけ。
現実の世界の天崎とは、もう住む世界が違うのだ。
「そろそろ入りで~す。準備お願いしま~す」
スタッフに言われ、石垣は自分で自己暗示をかけた。
演技に集中。
演技に集中。
演技に集中。
自分はもう何も考えず、偽りの世界で生きる。そう決めたのだ