ドラマチックスイートハート
「それに、2人で何回か食事に行ったんでしょ~~? それも優ちゃんからの誘いで~~~。普通好意がなきゃ、自分のお気に入りの店なんて紹介しないけどな~~」
「でも栄子だって、お気に入りの店を連れてくれたでしょ? たまたまだろ」
「何言ってるの~~~エーコだって康クンに気があるから教えてあげたんじゃん~~ウフフ~」
そうは言っても、石垣は反応しなかった。
いつもの冗談かと思って居るからだ。
しかし、佐々木からしたら実は冗談でも何でもなかった。
この人は本気で堂々と言う性質なのだ。
「とにかく俺は演技の世界で生きると決めたんだ……この偽りの世界でね……」
すくっと立ち上がり、部屋を出ようとする石垣。
「どこ行くの~~~?」
「……ちょっと潮風に当たりにね……」
そう言って、石垣は行ってしまった。
彼の言葉通り、今日の演技は見事なもの。
監督も納得のものであったが、佐々木から見たらそうでもなかった。
これは女性にしか分からない感覚で、羽場監督も気付けないもの。
感情は表面に荒々しく出すが、生気のないカラクリ人形のような印象が強く残る。
今のままでは、石垣は役者としてダメになってしまうであろう