涙跡-Ruiseki-
「電話、誰なん?
マサさんって…、聞いたことないけど。
新しい彼氏?」


アタシがポテチを食べながら
そう聞くと、
髪をコテで巻きながら、
鼻でフフッと笑った。


「ううん、違う。」

「じゃ、誰?」


いつもなら誰と電話してようが、
どんな会話をしてようが、
アタシは気にも留めなかった。

でも、有希の今の電話の会話は
多分…。ってか、絶対に
普通の話じゃなかったから。


「相手をする」とか、
「3万でいい?」とか…



「奈央、誰にも言わない?」

有希が今までに無いくらい、
真剣な顔をして、アタシを見つめる。

「え…、うん。言わないよ!」

「ウチさ、売りしてるんだよね。」


“売り”なんて言葉を、
アタシは初めて聞いた。


だから、パッとした
イメージが中々わかない。


「なん?売りって。」

「あぁ…。えっと、売春って言ってさ、
早い話がセックスして金貰うんよ。」

準備をし終えた有希が、
平然とした顔で、そう言い捨てる。


アタシは、頭の中が混乱した。

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