涙跡-Ruiseki-
「いいじゃん。
これで辞めれるもん、売り。」

「アザ、治さなきゃ
抱いてやんねぇぞ?
それでも、奈央はいいんだぁ???」

…意地悪。

尚人は、アタシと“する”ためだけに
アタシを誘ってくれてるのであって…
ヤれないのなら、
もうアタシを誘ってくれない…だろう。


「・・・。」

黙り込んで、俯く。


誘ってくれなきゃ、
会えないじゃん…。


ここで初めて、『イジメ』って奴を
憎んだりした。



「黙ってちゃ、分かんねぇよ?」

鋭い目つきで、
アタシのことを見つめる。

「うん…。」

「止めて欲しい?」

ニコッと笑い、
アタシに深いキスをする。

まるで、のぼせたみたいに
頭の中がクラクラして
多分、きっと、すごい顔が真っ赤になってて…

「ぅ…んッ。」

「ん。じゃ、今日泊まってけ?」

「…うん。」

尚人の家に泊まるのは、
これで3回目…くらい。

寝る時とか…
尚人は決まって、何もしてこない。


スイッチが入らないと
したくならない…とか言ってたけど、
アタシじゃスイッチ、
入らないみたいだね。

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