涙跡-Ruiseki-
でも、ホッとしたのもつかの間。
トイレの個室から出ようとすると
ドアが開かなかった。

…またか。

溜息をつき、下を向く。


…何でかって?

上から色んなものが、
降って来るから。


最初は水。

次にトイレットペーパー。

最後に画鋲。


水はいいんだよね、別に。
冬の季節は寒いんだけど…

1番嫌なのは、トイレットペーパー。

水かけられた後に、
トイレットペーパー落とされると、
髪とかにくっつくんだもん。


『バシャーン』って音と共に
全身がベタベタに濡れて、
有希達の笑い声と共に
トイレットペーパーや画鋲が
降って来た。


「坂木先輩と仲良くしやがってさ。
マジ、イラつくんだよね!!!」

有希の声や、
他のクラスの女子達の声が
トイレの中に響き渡る。


「ウチ、狙ってんだよね。
遊女が邪魔すんきゃねーよ!!!」

なんて、有希の声が聞こえた時に
尚人の声が同時に聞こえた。

「売り、奈央に教えたお前は
遊女じゃねーんだ?」

フッて鼻で笑う声がして、
アタシの胸がトキメク。

「どいてくれるかなぁ?」

有希達のことをつき飛ばしてるのかな…
『バンッ』とかって音と、
有希達の悲鳴が聞こえた。


『ガチャ』って音と同時に、
開かなかったドアが
勢いよく開いた。

< 53 / 76 >

この作品をシェア

pagetop