涙跡-Ruiseki-
アタシの腕を、
グイッと引っ張り
広い胸で
アタシのことを抱きしめる。

「奈央へのお遊びは、
これでおしまい。次はアンタの番?」

鋭い目つきで、有希のことを
睨む尚人の顔を見て、「怖い」と
思いながらもアタシ、
何故か尚人にドキドキしてた。


「アンタさ、“する”の好き?
相手してくれる奴、いっぱい居るんだけどさ。
紹介してやろっか?」

意地悪な笑顔。
でも、真剣な真っ直ぐな目。


こんな顔でさ…
自分のこと守ってくれる人、
今まで居なかったから
ドキドキ、止まらないじゃん…。


「奈央が遊女って?
てめぇも一緒だろーが!!!」

すごい怖い顔して、怒鳴って
有希のことを一発蹴る。

有希は泣いてるだけで…

それにイライラしたのかな?
有希の髪を思いっきり掴み、
タンを有希の顔に向かって吐いた。


「売れるもん売って、何が悪いんだよ!!!
今度奈央に何かしたら
マジ許さねぇかんな!!!」

そう言葉を吐き捨て、
アタシの腕をグイッと引いて
トイレを出た。




…カッコ良くないわけが無い。


カッコ良過ぎるよ…。

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