涙跡-Ruiseki-
「真美さんのこと、俺も好きっすよ?」

「それは、客としてでしょう?
彼女だって居るんじゃない?」


真美さんは
尚人に1番金を出してくれる
客で、38歳…くらい。

顔は見たこと無いけど、
声からして
多分すごく綺麗…だろう。


「居ませんって、彼女なんか。
真美さん居てくれたら充分っすから。」

「ははッ。尚人さ、すごい
冗談上手いよね。」


…気軽に、尚人の名前
呼ばないでよ。

気軽に、触らないで…


アタシの気持ちは、
大きくなるばっかりで。

止めようとしても、
止まらなかった。


真美さんが帰ろうとする声が聞こえた時、
アタシは尚人の部屋を出た。


真美さんと会うように…
わざと。

こんなことをして、
尚人にどう思われるかなんて
アタシが1番よく分かってたけど
自分の気持ちが、
止まらなかった。
…止められなかった。

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