涙跡-Ruiseki-
アタシが廊下に出ると、
丁度尚人と真美さんが
一緒に寝室から出てきた。



一瞬…、場の雰囲気が
凍りついたかのように思えた。




「…尚人、誰?」

真美さんが、口紅で
ほんのり赤く染まった唇を開く。

「妹なんですよ。
最近、俺と同じ学校に転校して来て。」

…妹??

違うじゃん。



そりゃ確かに、
アタシと尚人は付き合って無いし
ただの友達程度なのかもしれないけどさ…

でも、傷つくよ…。


「奈央、挨拶しろ?」

真美さんに気づかれない程度に
アタシのことを睨み、
いかにも不機嫌な顔をアタシだけに
見せ付ける。


尚人のことが、
ただ大好きなだけなのに…


逃げたくて、
どうしようもなく辛くて、
でも、逃げちゃ尚人との関係が
終わるような気がして、怖くて。


涙を瞼にいっぱい溜めて、
アタシは真美さんにお辞儀した。

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