涙跡－Ruiseki－

「…最っ低。」

尚人のことをどんなに
悪く思ったって、
嫌いになれるわけなんか無いのに。

フワッと冷たい風が吹き、
足元がグラッとふら付く。


自分が何をしているかに気づき、
馬鹿みたいに思えて
自分からフェンスを登って
屋上に足を下ろした。


「ハァ…。」


関係の終わりに、
アタシはただ溜息しか出てこなくて。


涙の粒を、いっぱい落としながら
ただ自分のしたことに対して
後悔していた。




…丁度その時、
『ガチャ』ってドアが開く音がして
尚人の顔が見えた。


視界がボヤけてて、
愛しいはずの尚人の顔が
全然見えない。


でも分かる。
きっと、怒ってる…って。


「なお…「何してんだよ！！！馬鹿。」


アタシの言葉にかぶせて、
尚人がアタシを怒鳴りつけた。


「ほら…、立って。帰んぞ…？」

アタシのことを抱き上げて、
腕を引っ張って
家へと連れて行く。

「…帰って、いい…の？」

「…お前の家は、此処しかねぇだろ。」

涙でボヤける視線の中に、
笑顔の尚人が
しっかりと見えた。


家の中に入ると、
必然的に尚人の部屋へと
連れ込まれた。