Home*ただいまを言う場所*

「僕はね、知らなかった。……だって純ちゃんには嘘つかれたことがないからね。曖昧に返事されたり、濁されたりはしたけどね?」

この自信に溢れた態度。
開いた口が塞がらない私を見てますます気を良くしたのだろう、クスッと笑って、私の頭を優しく撫でる。
拓は……、この人は、本当に私に甘い。
してやられた、と思う。
いっそ可笑しくなって、笑えてきた。
よぎった不安はもう、本当にどこかへ消えた。

頑固者の私だから、素直になれないことも、譲れないことも、わだかまりも、たくさんの小さな喧嘩や過去のアレコレに、これからもぶつかり合うことはあるんだろう。
けどきっと、その度にこの人とならば、そんなものさえふたりの絆に変えていけるんだろう。
――……君が愛しい。
胸にふつふつと湧いてくるのは、今までよりももっと大きな感情。
私の笑いが収まったところで、拓は真剣な瞳で私の手を取る。

「でもね、純ちゃん。僕だけが知ってることもあると思うんだ。例えば……何かを決心して話す時、純ちゃんは掌を一度ギュッと握り締めるんだ。知ってた?」


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