a k a t s u k i
踊り場に足を踏み出したとき、俺の足元に缶がひとつコロコロと転がってきた。

それを拾い上げて転がってきた方を見ると、男子の集団が目に入り俺はギクリとした。

かなりタチの悪そうな連中である。

できるものなら関わりたくない種族だ。

だが、いまさら引き返すには不自然な位置まで来てしまっていた。

俺は平静を装って、なんとか急ぎ足でその集団の前を通り過ぎようとしたが、健闘空しく彼らの1人に声をかけられてしまった。

「おい、そこのお前。俺の代わりにその空き缶捨てといてくれよ」

リーダー格の、いかにも酷薄そうな顔をした目の細い男が言った。

周りの取り巻き達はニヤニヤしながら俺の反応を待っていた。

科学が発展した秀たる都市でも、こういうところは俺が前いたところと変わらないんだな、としみじみ思う。

俺は小さくため息をついた。

「何だよ。何か文句あんのか?」

リーダー格の男が威嚇するように言った。

「いや…。わかりました、捨てておきます。それじゃ」

俺はそれだけ言うと、残りの階段を登り始めた。

もちろん、連中が呆気にとられた表情で俺を見つめていることなど知る由もない。

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