a k a t s u k i
ケイが突然深刻そうな表情をしたので思わず俺は動揺してしまった。

「ね、狙われてるって、何だよ?そもそも誰に狙われるんだよ」

「色んな奴さ。本来ならあの席は凡人が座れるような席じゃないからね」

「はあ?」

その言い方だと、危険極まりない席に俺が座ることになる。

「ああ、ごめん。ちょっと急いでるんだ。この話はまたあとで!」

口早にそう言うとケイはこの場を去って行った。

…何なんだ?

俺は疑問を残したまま教室に入ったが、中の光景に思わず足を止めた。

足を踏み入れた瞬間に感じた鋭い視線、糸が張っているかのようにぴん、と張りつめた空気。

そして教室のちょうど真ん中の席の机に置いてある、深紅の薔薇がどっさり入った花瓶。

まるで敵の陣地に入り込んでしまった兵士になった気分だ。

どうやら手厚い歓迎はされていないらしい。

確認のため黒板に貼られた座席表を一瞥したが、やはり花瓶が置いてある席が俺の席だった。

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