a k a t s u k i
席に着いてからも痛いほどの視線は俺に向いたままだった。

こんな小さな机の真ん中に、まるで見せつけるように、威圧するかのように置かれた薔薇入りの花瓶。

いったいどういうつもりなんだ。

転校早々、この学校に来たことを後悔する羽目になるとは。

俺は花瓶を床に置き、鞄を机の上に置いた。

「はい、お前ら、座席表見たならとっとと自分の席に座れよー」

そこに、張りつめた空気を裂くように担任のミヤウチが飄々と入ってきた。

ミヤウチと会うのは今日が2回目だが、いまいち掴みにくい男だな、と感じていた。

めったに表情を変えないし、何を考えているのか、冗談を言っているのか本音なのかわからないので苦手だった。

「みんなも知ってのとうり、このクラスに転校生が来た。ホウジョウ、簡単に自己紹介して」

俺ははい、と返事をしてその場に立った。

「ホウジョウ イツキです。父の仕事の関係で転校してきました。1年間、よろしくお願いします」

俺が席に着くと、ミヤウチが補った。

「ホウジョウは国内でも有数の進学校にいたそうで、編入試験もほぼ満点だったそうだ。向こうじゃ2年の後期から3年次の教科書に進んでたみたいだから、勉強しててわからないことがあったら訊いてみるといい。はい。じゃあそろそろ始業式、行こうか」


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