a k a t s u k i
「てめぇが噂の転校生か。話あるからちょっと顔貸せ」

そう声をかけられたのは、始業式が終わり講堂から教室へと移動しているときだった。

朝会った奴らとはまた違う、ガラの悪い男子生徒が俺の前に立ち塞がってきたのだ。

「話って…ここじゃ出来ないんですか?」

こういう類の人間と話すときは、後輩だろうが同い年だろうがつい敬語になってしまうのは俺の癖だった。

「静かなとこで話してぇんだよ」

「はぁ…」

「まあ、別に断ってもいいけどよ。でも…」

「違うところからも声がかかるし、いつかは顔を貸さなきゃいけなくなるって言いたいんですか?」

続きの言葉を遮った俺に、一瞬、間を置いて、男が訝しげな顔をした。

「お前、あの席のこと知ってんのか?」

「知らないですよ。でもあれだけ色んな人達から好奇の目で見られて噂もされたら、あの席が特殊なことくらい予想がつきますって」

「…わざわざ外部から来た人間に託すくらいだからな。意図は詳しくわからんがどうやら今年は例外のようだ」

こいつ、いったい何なんだ。

俺は不思議なものでも見るような目で男を見た。


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