a k a t s u k i
「あの、知ってるみたいだから訊きますけど、あの席、いったい何なんですか。そんなに重要なもんなんですか?」

俺が問うと男は獣のような目つきで睨んできた。

あまりの迫力に体がビクッとした。

「…あの席はな、」

男はそこで言葉を止めた。

「知りたいならついてこい。その方が早い」

返事を聞くこともなく男はさっさと1人で歩き出した。

俺は慌ててそのあとを追う。



俺達はそっと校舎を出た。

柔らかい春の陽射しを浴びながら、男は迷うことなく一定のスピードで前を歩き続ける。

俺は男が自分をどこに連れて行こうとしているのか見当がつかなかった。

「あんたもあの席を狙っている1人なんですか」

俺は男に話しかけてみた。

男の後ろ姿はピクリとも動かない。

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