a k a t s u k i
校門を抜け交通量の多い国道に入っていく。

狭い歩道の脇を、トラックがビュンビュンと通り過ぎていく。

…少し風が出てきたようだ。

俺は空を見上げる。

春の天気は変わりやすい。

灰色の厚い雲が俺らの頭上を覆い、ゆっくりと流れていく。

ひと雨くるかもしれない、と思った。

「――悪いな、転校生」

男は急に立ち止まると、俺の方に向き直った。

そして堅く握られた拳を俺めがけて突き出してきた。

「な、何すんだよ!」

幸い、間一髪で避けることができた俺は怒りも露わに詰問した。

「…ふん、そこそこ動けるようだな。けどな、その程度じゃあ、あの役割は勤まらねぇぞ」

わけのわからないことを喋る男に、俺は唖然とした。

背中に冷や汗が伝う。


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