a k a t s u k i
突然、俺を見つめる彼女の目に感情が籠もったので、心臓が大きく鳴った。

何かを訴えるような、懇願しているような目だった。

「強いだけじゃ駄目って…俺、強くすらないけど」

「その科白、自分で言って恥ずかしくないの?」

「てめぇはいちいちそういうことしか言えねぇのか」

嫌みったらしいツバキを睨むと、彼女は嘲笑するかのようにふん、と鼻を鳴らした。

「それはこっちの科白よ」

「はあ?どういう意味だよ」

「私、自分の力量も知らないくせにわざわざ自分を卑下する奴嫌いなの。あんたがそんなだったら余計に認められない」

声に怒りが含まれていた。

「……っ」

あまりに真摯なツバキの眼差しと口調に返答できずにいると、ケイがあの人懐っこい笑顔で俺の左肩にぽんと手を乗せた。

< 26 / 27 >

この作品をシェア

pagetop