a k a t s u k i
ふと人の気配を感じた俺は顔を上げた。


「あ、」

そこには、いつの間にかウォームアップを終わらせていたアカリが立っていた。

「お前ら、もう2時になるぞ」

高すぎることも低すぎることもない、耳に馴染みやすい声だった。

アカリと目が合う。

「ちゃんと来たな」

自分と同じ年の女にできるとは思えないほどの妖艶な笑みを浮かべた彼女に、一瞬声を失い、思わず見惚れてしまった。

「大して説明もせずに巻き込んでしまってすまない。すぐにでも説明したいが生憎いまは時間が無い。とりあえず今日は私についてきてくれ」

有無を言わさぬオーラに気圧されて、俺はただ頷いた。

「やっと始まるのね。イツキ、足手まといにだけはならないように注意してよ」

「てめぇ…。何するかも教えなかったくせによくそんな事を…！」

「何言ってんの。世の中食うか食われるかなんだから、特にこの街は。それに何度も言ったじゃない。来ればわかる、って」

「イツキなら大丈夫だよ。何しろアカリが直々に声をかけた人だから」

ケイは俺の肩をぽん、と軽く叩いた。

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