まーくんとみーたん
迷わず入った女子トイレ。
 
すぐに水道で手を流される。
 
「大丈夫?痛くない?」
 
って、まーくんのが泣きそうな顔。
 
「いや、大丈夫だけどってか、ここ女子トイレ・・・」
 
なんの違和感もなく、女子トイレに入ってるまーくん。
 
「だって、みーたんを男子トイレに連れ込むわけにもいかないじゃん。みーたん、女の子なんだから。それに、おれは可愛いから大丈夫。」
 
って、女の子より可愛い顔で微笑まれると
 
あたしは何も言い返せない。
 
「えっと・・・、それはまぁ、いいとして。何があったの?」
 
「ウェイターの人がすっごく腕プルプルしててさ、危ないなぁって見てたら、案の定どんどんカップが傾いてくわけ。みーたんの真横でだよ?もう、おれ、危ないって思ってさ、とっさにシャツをみーたんに被せたんだけど、手まで隠せなくて・・・。ごめんね、みーたん。痛いよね?」
 
今にも泣きそうなまーくん。
 
なるほど。
 
あの真っ暗になったのは、まーくんのシャツが原因だったってわけか。
 
開いた手で髪のにおいをかいでみる。
 
ほんのりと、コーヒーの香り。
 
どうやら、まーくんのシャツはコーヒーがあたしにぶっかかるのを防いでくれたみたいだ。
 
「もう、大丈夫だよ。店員さんも困ってるだろうから、店内戻ろ?」
 
言うと、ホントに大丈夫?ってまだ泣きそうな顔。
 
まーくんのシャツのおかげで、かかったのは手の甲だけだし。
 
まーくんが、すぐに冷やしてくれたから、ほんとに痛くない。
 
まぁ、冷たさで痛覚がマヒしてるだけかもしんないけど。
 
まーくんはしぶしぶと、あたしを引っ張って店内に戻る。
 
まるで、壊れ物を扱うかのように、優しく手を握りながら。
 
いや、あたし、伊達に男女って言われてないからね。
 
タフだから、ホントは大丈夫なんだけど
 
女扱いされるのも、たまにはいいかなって思って、身をまかせた。
 


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