まーくんとみーたん
「なんで、そんなに不機嫌なの?」
 
「だって、みーたん怪我した。」
 
「大事じゃないんだから、いいじゃん。新しいケーキとコーヒーまでもらっちゃったし。お得じゃん。」
 
「おれ、怖かったんだから。みーたん、死んじゃうかと思った。」
 
そんな大げさな。
 
コーヒーかぶっただけで死ぬわけないじゃん。
 
「そんな、おおげさな。ほら、ケーキ食べよ。ここのケーキおいしいんだよ。」
 
「知ってるよ。だいたい、ここはおれが招待したんじゃん。」
 
拗ねたようにショートを口にするけど、食べた瞬間にまーくんは笑顔に戻ってて。
 
なんて単純なやつ。
 
「にしても、まーくん凄かったね。よくシャツで防げたね。」
 
「おれ、こんなんでも元バスだから。瞬発力あるんだよ。」
 
知らなかった、まーくんの一面。
 
そっか。
 
昔はコートに立ってビシバシやってたわけだ。
 
んで、夜に裁縫でもしてたのかなって。
 
あまりにも鮮明に想像できて、少し笑えた。
 
「なんで笑ってんの?」
 
「べつにぃ。・・・隙ありっ!」
 
あたしはまーくんの苺ショートのてっぺんにある苺を奪いさる。
 
「あっ!ちょっと!おれ、楽しみに取ってたのに!」
 
まーくんは本気で悔しそうな顔をして。
 
しょんぼり肩を落としてる。
 
・・・でも、みーたんだからいっか。
 
って、あんたどんだけあたしに弱いんだよ。
 
少し優越感を感じて、少し鈍感なまーくんにあきれる。
 
これ、さっきの返事なんだけど、まーくんはきっと気付かないよなぁ。
 
いじけながらキャラメルマキアートを啜るまーくんに
 
あたしは、自分のモンブランのてっぺんにある栗を差し出した。
 
「元バスの瞬発力も、あたしには勝てないね。」
 
なんて、照れ隠し。
 
まーくんはパッと顔を輝かせると、おいしそうに栗をほおばった。
 
メインをくれるなんて、みーたんは優しいなぁって。
 
ついさっき自分がメインを取られてるってのに、少し抜けてるまーくん。
 
しかも、もう完璧に栗嫌いの設定忘れてる。
 
栗をほおばるまーくんは極上の笑顔だ。

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