まーくんとみーたん
二人とも、綺麗にケーキとコーヒーを平らげて、いざ帰ろうって時。
 
まーくんは帰り支度をしながら、困った顔をした。
 
「そーいえば、これビシャビシャで着れないや。」
 
つまんで見せてくれたのは、茶色く染まったチェックシャツ。
 
カバンに入れようかと自身のカバンをみてるが、生憎今日はコンパクトでスタイリッシュに決めてたみたいで。
 
カバンには入りそうもない。
 
まーくんは、あたしのほうを見て
 
「今日だけは許して。」
 
って言いながら、シャツを腰に巻いた。
 
吐き気がするほど嫌いな着方。
 
着てる男。
 
だけど、今日のまーくんは、腰に巻いたチェックシャツを含めてもかっこよく見えた。
 
「ねぇ、あたしね、シャツを腰に巻いてスカートっぽくする男や、ブーツ履く男とか、レギンスを穿くような男、大っ嫌いなんだよね。」
 
「だから、今日だけは許してよぉ。」
 
また少し泣きそうな顔。
 
男らしさとは、かけ離れた、情けない顔。
 
それでも、精一杯男らしくなろうとして、さっぱりとした短髪。
 
腰に巻いたコーヒーまみれのチェックシャツは、ヒーローの証。
 
かっこいいじゃないか。
 
それじゃぁ、手の甲よりも痛む、この胸の痛みは
 
さしずめ、ヒロインの証ってとこか。
 
「ねぇ、まーくん、あたしね、そんな男がね、大っ嫌いだったんだよ。」
 
「だったの?」
 
「そう、だったの。」
 
きょとんとしてる、まーくん。
 
あー、鈍感なやつはこれだから困る。
 
「ねぇ、あたしが意味なく人の苺を奪う意地悪なやつだと思う?」
 
え?って顔して、考え込む。
 
でも、すぐに弾けた笑顔になると、
 
「お、おれ、ほんとは栗大好きなんだっ!」
 
って。
 
知ってるよ。

だからあげたんじゃん。
 



まーくんの愛が苺なら
 
あたしの愛は栗。

ほら、乙女な彼氏と、かっこいい彼女には、ぴったりな愛でしょ?

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