まーくんとみーたん
あたしより、女らしいこの男は、にこにことメニューを読み上げてる。
 
「じゃぁ、キャラメルマキアートと、コーヒーと、モンブランと、苺ショート。」
 
四つの注文と、極上のスマイル付き。
 
バイトの子はもう、目がね。
 
はっきりとハート型。
 
ほら、またここに被害者ひとり。
 
これだから無自覚はタチ悪いよね。
 
「あんた、そんな食べんの?飲み物まで二つじゃん。」
 
「バイト上がりだから、おなか減ってんの。」
 
まぁ、心は乙女でも、体は男だもんね。
 
おなか減るよね。
 
「みーたん、今日おれが話そうとしてること、なんだと思う?」
 
「は?そんなの分かるわけないじゃん。」
 
「みーたん、勘がいいから、分かってると思ったんだけどな。」
 
そんな無茶な。
 
まーくんは私がスーパーマンだとでも思っているのだろうか。
 
「で、その大事な話ってのはまだしないわけ?」
 
「うん。だっておれおなか減ってるもん。」
 
「あんた、ほんとマイペースね。そんなんだといつまで経っても彼女なんて出来ないよ。」
 
「大丈夫だよ。」
 
「なに、もしかして彼女出来たの?大事な話ってそれ?」
 
なんだ、まーくん、彼女出来たのか。
 
じゃあ、あれか。
 
大切な話ってのは、彼女が出来たからもう会えない的な。
 
まーくん、律儀だからね。
 
彼女が出来たら、他の女の子と遊んだりなんて出来ないよね。
 
でも、なんだか、それはそれで若干せつないな。
 
ん?
 
せつない?
 
せつないか?
 
大切な友達と会えなくなるから?
 
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