まーくんとみーたん
「違うよぉ。おれに彼女が出来るわけないじゃん。それに、彼女なんか、いらないよ。おれには、みーたんがいるもん。って、みーたん、聞いてる?」
 
「あ、ごめん、ちょっとボーっとしてた。」
 
「もー、今おれちょーかっこいいこと言ったのに。」
 
「まーくんがかっこいいこと?可愛いの間違いじゃなく?」
 
「もー、ほめないでよ。」
 
まーくんにとって、可愛いはほめ言葉なのか。
 
「まぁ、いいや。おれだってホントはかっこいいんだから。」
 
知ってるよ。
 
皆知ってるよ。
 
まーくんがかっこいいことくらい。
 
でも、ほんとにかっこいいってことを知ってるのは、きっとあたしだけだけど。
 
「お待たせしました。こちら、キャラメルマキアートのお客様。」
 
さっきと違って、今度はベテランっぽいおばさん。
 
まーくん、モテ幅ひろいな。
 
「あ、全部こっちです。」
 
おばさんは、ちょっとびっくりしてる。
 
そりゃ、そうだよね。
 
こんな甘いもの全部男性側だとは思わないよね。
 
おばさんは、すぐに営業スマイルを取り戻すと、失礼しますって言いながらカウンターに戻っていく。
 
さすがベテラン。
 
「いっただきまーす。」
 
満面な笑みでフォークを取るまーくん。
 
モンブランを少しすくって口に持ってく。
 
あたしはそれを、羨んで見てるだけ。
 
おいしそうに食べるかと思ったら、まーくんは急に苦い顔をした。
 
「うわ、これ栗入ってるよ。栗駄目なんだよね、おれ。」
 
って言いながら、口直しのつもりか、コーヒーを手に取ってまた苦い顔。
 
「にっがっ。ってか、あっつっ。おれ、これ無理。みーたん、飲んでよ。」
 
言いながら、モンブランとコーヒーをこっちに押し付けてくる。
 
いやいや、モンブランって栗じゃん。
 
当たり前じゃん。
 
ってか、あたし覚えてるぞ。

前来た時にコーヒーと一緒にモンブランを食べてて、それで、あたしまーくんがおいそうにして食べてるの見て、今度食べようかなって・・・

あ。

やられた。

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