まーくんとみーたん
まーくん来た時あたし財布見てたから、それで気付いたんだ。

あたしが今金欠だってこと。

あたしがおごられるのが嫌いなの知ってるから、ご丁寧に両方とも、一口だけ口つけてて。

あたしに気を遣わせないようにって。

ほら、あたしだけが知ってる。

まーくんのかっこよさ。

大っ嫌いなのに、こーゆーとこだけ馬鹿みたいにかっこいいから。

あたしはいつも困るんだ。

それにしても、モンブラン頼んで栗入ってるから駄目って。

そんなとこがまーくんらしくてなんだか笑えた。

「仕方ないなぁ。じゃあ、食べてあげるよ。」

なんて。

結局可愛くないあたし。

モンブランを一口大に切って、口に運ぶ。

口の中いっぱいに広がる、至福の甘さと、優しさの栗風味。

あまりにも、おしくて。

ほっぺたに手を当てて唸る。

あたしらしくない、唯一の女の子っぽいとこ。

甘いものが大好き。

「おいしい。」

そう言って、幸せを噛みしめると、若干後悔したまーくんの顔。

ほんとは、モンブラン食べたかったのかな、とか思って。

さっきのお返しのつもりで、モンブランをすくってまーくんの前に突き出す。

「栗じゃない部分なら、食べられるでしょ?」

途端に輝く笑顔。

眩しいったらありゃしない。

ってか、どんだけ食べたかったんだって。

そんなに食べたかったなら、遠慮せずに自分で食べればよかったのに。

なんて。

ほんとはうれしかったくせに、やっぱり可愛くないあたしの考え。

まーくんは嬉しそうにあたしが突き出したフォークをほおばった。

「ほんとだ、栗じゃないとこ、ちょーおいしい。」

って、まだばれてないと思ってるのか、栗嫌いの演技を続けてる。

そんなおバカなまーくんは嫌いじゃない。

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