偽りの人魚姫
「ねぇ、モリノってどこ住んでるの?」
 
まずはこう、世間話からね。
 
直球ではいきませんよ、そりゃ。
 
いきなり、実は喋れるんでしょって聞かれてもね、困っちゃうもんね。

俺ってば空気読めるから。
 
でも、彼女はいつもの仏頂面からなんの変化もない。
 
待つこと、30秒。
 
返事はなし。
 
「いや、俺さぁ、この前地元でモリノ見かけて。近所なのかなって。」
 
全く口を開く気配がないくせに、目は真っ直ぐ俺の目を見てて。
 
なんだか、無言のうちに責められてる感じ。
 
少し焦って、詰め込むように言葉を連ねる。
 
「俺の地元、中学少なくて皆同じとこ行くのに、モリノのこと知らないなって思って。あ、もしかして高校で引越して来た感じ?それとも、私立?」
 
彼女はやっぱり、俺の目を見たまんま、黙ってる。
 
頑張って話しかけてる俺は、ナンパしてるチャラい青年みたいだ。
 
まぁ、見た目的には否定出来ないんだけど。
 
金髪だし。
 
ピアスしてるし。
 
でも、俺、こう見えて硬派なんだけどなぁ。
 
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