偽りの人魚姫
俺が手でハートを作って、ぱっくり割る動作を見せると、俺の手製ハートが割れると同時に、昼休み終了の予鈴が鳴った。

「おい、俺はお前とこんなくだらない話をするために、お前を呼んだんじゃないぞ。」

「でも、そんなくだらない話にのってくれるよっさんが俺は好きだよ。」

隣を通り過ぎようとしていた女の子が、びっくりした顔で見てくる。

「俺は嫌いだ。」

女の子は首をかしげながら、自分の席に戻っていった。

男の子ってよく分かんないわ、とか思ってるに違いない。

男の友情なんて、そんなものさ、ちくしょー。

「今日の放課後は製作な。部室から、キーボード持って来て6組にいろ。」

「え、今日練習日じゃん。」

「もう12月だぞ。いいかげん作らないと間に合わないだろ。」

「俺ひく気マンマンだったのに。」

「誰のせいだ、誰の。」

「分かったよ。じゃぁ、せめてキーボード運ぶの手伝ってよ。あれ何気に重いんだよ。」

「無理。今日放課後、部費会議。」

そう言われると何も言い返せない。

義人は、俺らの経理担当、と言うより、事務的なことは全部義人がやっている。

まぁ、俺らって言っても、俺と義人だけなんだけど。

軽音部と言っても、それは単なる形だけだ。

一応部長や会計などもいるが、軽音部が軽音部として活動することは、あまりない。

学校主催のライブをやる時に順番とか打ち合わせするくらいかな。

普段は軽音部の中のグループが一つのコミュニティーとなって活動している。

でも、部費は軽音部としてじゃなきゃ支給されないから、毎月、月の始まりに軽音部内の各グループが集まって部費会議、正確に言うと、部費割り当て会議が行われるんだ。

今日はその日らしい。

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