偽りの人魚姫
「仕方ない。じゃあ、6組で待ってるよ。」

「そうしてくれ。」

「頑張って、部費がっぽり貰ってこいよ。」

「任せとけ。」

周りを見ると、だいぶ席が埋まっていたので、俺は義人に別れを告げ、ドアに向かう。

さっき俺が開けたまんまだからドアは音を立てる必要がなさそうだ。

「結局お前が告白してんじゃん。しかもフられてるし。」

「お前、聞いてたのかよ。」

恐るべし、ドア際君。

どうやったら、ドア際から窓際の会話が聞こえるんだ。

3組を出たら本鈴が鳴ったので、急いで自分のクラスに戻った。

俺はドア際君と同じ席だから、多少遅れても、先生にあまりバレる事がない。

これが、ドア際の特権。

教室に着いたら、ちょうど先生が入って来た。

教科書とノートがロッカーに入っているのを思い出す。

俺は全国の男性諸君と同じく、置き勉派だからな。

先生はまだ、出席名簿とにらめっこしていて。

ゆっくりと、教室から抜け出す。

本鈴が鳴った後の廊下は、静まり返っていて、誰もいなかった。

まぁ、授業中だから当たり前なんだけど。

自分のロッカーを開けて、目当ての物を取り出す。

教室に戻ろうかと思ったが、すれ違いざまに出てきた人物に、思わず足を止める。

彼女だ。

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