偽りの人魚姫
「そういえばさあ、誠也、お前昼何してたの?」
「あ、遅れた理由?授業で言ったじゃん。よっさんに会ってたって。」
「そっちじゃなくて。モリノになんか話してたじゃん。」
「ああ、そっち。なんで、駄目?」
「駄目じゃないけどさぁ、あいつ、超無愛想じゃん?」
「確かに、良くはないけど。」
「隣だからさぁ、話さなきゃいけない機会があんだけど、上手くいかないのなんのって。」
「喋れないから仕方ねぇんじゃねぇの。」
「にしてもさぁ、愛想は関係ないだろ。なんもしてないのに、俺、嫌われてるみたいじゃん。」
「あ、お前にもそうなんだ。」
教室のドアを開ける。
もう、誰もいない6組の教室。
「お前にもって?」
「俺も嫌われてんのかなって思ったから。」
彼女のあの態度が、俺だけに向けられたものでないと分かって、少し安心。
「だから、わざわざ関わるやつも珍しいなって。」
「ん、ちょっとね。」
「なんだよ、ちょっとって。」
濁した俺の返事に、若干、訝しげな顔。
彼女が、もしかしたら喋れるかもしれない、なんて軽く口に出来ることじゃない。
彼女のためにも言ってはいけないだろうし、俺自身、俺だけが知っているだろうことだから、あまり知られたくない。
それに、まだ真相は分かってないし。
「まあ、いいじゃん。」
「変なやつ。」
「今頃気づいたのか。」
後ろから聞こえる声。
少し低めで、落ち着いた大人びた声。
よっさんだ。
「あ、遅れた理由?授業で言ったじゃん。よっさんに会ってたって。」
「そっちじゃなくて。モリノになんか話してたじゃん。」
「ああ、そっち。なんで、駄目?」
「駄目じゃないけどさぁ、あいつ、超無愛想じゃん?」
「確かに、良くはないけど。」
「隣だからさぁ、話さなきゃいけない機会があんだけど、上手くいかないのなんのって。」
「喋れないから仕方ねぇんじゃねぇの。」
「にしてもさぁ、愛想は関係ないだろ。なんもしてないのに、俺、嫌われてるみたいじゃん。」
「あ、お前にもそうなんだ。」
教室のドアを開ける。
もう、誰もいない6組の教室。
「お前にもって?」
「俺も嫌われてんのかなって思ったから。」
彼女のあの態度が、俺だけに向けられたものでないと分かって、少し安心。
「だから、わざわざ関わるやつも珍しいなって。」
「ん、ちょっとね。」
「なんだよ、ちょっとって。」
濁した俺の返事に、若干、訝しげな顔。
彼女が、もしかしたら喋れるかもしれない、なんて軽く口に出来ることじゃない。
彼女のためにも言ってはいけないだろうし、俺自身、俺だけが知っているだろうことだから、あまり知られたくない。
それに、まだ真相は分かってないし。
「まあ、いいじゃん。」
「変なやつ。」
「今頃気づいたのか。」
後ろから聞こえる声。
少し低めで、落ち着いた大人びた声。
よっさんだ。