偽りの人魚姫
3.空気が読めないわけじゃない
これが先週の出来事。
 
もう、気になりまくり。
 
彼女は、喋れないんじゃなくて。
 
ただ、喋らないだけ。
 
そんな訳あるか、とか思って、先週のことは俺の見た夢かなぁとか思ったりしたけど。
 
多分、あれは現実。
 
今でもたまに口の中がすっぱくなる。
 
久々に食べた梅おにぎりは、高値なふっくらシリーズなだけあって、びっくりするほど旨かった。
 
昨日も無意識に手に取ったおにぎりは梅で。
 
身体が覚えてる。
 
だから、先週のことは紛れもない事実。
 
彼女のこと、知っている人は他にいるのだろうか。
 
俺みたいに、たまたま聞いちゃった、とかじゃなく。
 
喋らない理由を知ってる人がいるのだろうか。
 
気になる。

理由も気になるし。
 
俺以外に知っている人が、俺以上に彼女を知っている人がいるかどうか。
 
だって、なんか優越感みたいな。
 
皆がよく行く店で、一人だけ裏メニューを知ってる感じ。
 
俺って、末っ子なもんだから、そういう、俺だけが、みたいなの好きなんだよね。
 
あと、気になることは知りたい主義。
 
一週間待ったのは、俺がチキンなせいと、様子見のため。
 
聞くには、なかなかに繊細な問題かなと思ったから。
 
空気が読めないと言われる俺だけど、実は違うんだな。

俺は空気が読めないんじゃなくて、読まないだけ。
 
だから、読む時は読むよ。
 
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