愛、シテあげる。番外編
「真央さん、今度の日曜日空いてますか?」


「んー」


リビングで雑誌を読みながら、興味無さそうに返事をする彼女は、僕の想い人。


「僕とデート「しません」


「じゃあ「しません!」



何も言ってないじゃないですか。
電光石火のような拒否に、さすがに僕の胸も痛む。


「どうしても行きませんか?」

「行かないってば」


そう言って、唇をギュッと結ぶ。
可愛らしい…。
こうやって真央さんを想う度、切なさは濃くなるんですが。


でもこれだけ否定されるのも無理はない。なぜなら彼女は男性恐怖症。今普通に会話できるのも、今までの努力の賜物ですから。



「真央さんと一緒にいられないなんて、つまらないですね」


「…」


なかなか引き下がらない僕に、真央さんは無視を決め込んだらしい。

しかし僕も男です。再び出会って数ヶ月、この想いは十数年。デートの約束くらい、こじつけないでどうするって話ですよ。


「真央さん真央さん、水族館はどうですか?」


「…」


「イルカのショーなんて素敵ですよ」


「…」


「またはジェットコースターとか」


「もう、しつこい」


「真央さんと一緒に過ごしたいんです。絶対楽しいですから」


「う……騙されないもん」


会話をしてくれたことが嬉しくて、つい本音が漏れる。でも彼女はつれない。


「真央さん、甘いもの好きですか?」


「まあ…」


「美味しいスイーツのお店にご招待しますよ?」


「それって……お、お値段は?」


「僕がご馳走しますから気にしないでください」


「えっ、それは駄目」


「スイーツバイキングもありますよ?」


「うぅ……」


渋る真央さんは、なかなか折れない。
諦めてまた今度にしようかな、と思い始めながらも説得を続ける。


「甘いものだけでなく、パスタなんかもありますよ」


「んーパスタかぁ……」


「サラダも」


「んー……サラダ」


「あと、そうですね……ハンバーグとかフル「行く!!」


「えっ」


「えっ?」


そういえば真央さんって、ハンバーグ大好きだったような……。


デートの約束をこじつけたのに、何でしょうこの敗北感は。



●敗北感●


(蓮どうしたの?)
(肉に負けるなんて…)


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