愛、シテあげる。番外編
「お待たせしました」


ソファでゴロリと寝転がる真央さん。
僕はテーブルにコップを置き、膝をついて真央さんに目線を合わせる。


「ほら、起きてください」


「んー」


ポンポンと優しく肩を叩けば、少し身動ぎ(みじろぎ)する。

柔軟剤のせいか、フワフワしたパジャマから伝わってくる体温。


「猫みたいですね……」


真央さんの頭をそっと撫でると、異様に愛しさが込み上げた。
柔らかくて細い髪に唇を寄せると、ふわりといい匂いがして…。


一瞬、獰猛な衝動が僕を動かした。


「っ…わ…!」

気がつけば、真央さんの唇に噛みつかんばかりの距離にいて、慌てて離れた。


心臓がバクバクしている。



「……危なかった」


片手で口を覆って、気持ちを落ち着かせる。

自分の手のひらも熱い。脈もいつもより随分速くて……。




これは、結構ヤバイかもしれない。




「……れん?」


「わわっ!」


「あ、水ー!」


いきなり目を開けた真央さんは、僕からコップに目線を移すと、飛び起きた。

僕よりただの液体の方が好きですか……。


なんてちょっと落胆したおかげで、高ぶった気持ちが静まった。


ため息を吐く僕に気づかない真央さんは、ゴクンゴクンと美味しそうにレモン水を飲む。

その姿に、思わず笑みがこぼれた。


「ぷはー!」


「もう一杯飲みますか?」


「だいじょーぶ」


ニカッと笑って、またソファに寝転がる。


見たことの無い満面の笑みに、胸がときめいてしまう。



普段から、僕に見せてくれればいいんですけどね。


「まだ無理でしょうね……」


ブツブツ呟きながら、コップを片付けにキッチンへ向かった。

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