愛、シテあげる。番外編
熱のこもった布が、彼女の体温を余計に感じさせる。

あらゆる全てが焦れったくて、手が震える。鼓動が速まる。


ボタンを外し終え、一旦手を止めた。

僕が少しでも触れれば、あっという間に彼女の肌が露(あらわ)になるだろう。

そしたら多分、僕はもう最後まで止まらない。


そう考えてみると、朦朧とした頭が急に冴えてきた。


今の状態の真央さんとなら、恐らくそれは可能だろう。


だけど、それでいいのか?

彼女の気持ちを無視して、そんな自分勝手なことをして……。


そんなの、いいわけ、ないでしょう。




「最、低だ」


ポツリと呟き、ボタンを元通りに掛けていく。


欲望に流され、勢いに任せて、こんなことするなんて。


「……ごめんなさい、真央さん」


一度、深呼吸をしてから、彼女の髪にそっと触れた。


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