愛、シテあげる。番外編
「――真央さん?」


気が付くと両手の重みが消えていて、辺りを見渡すと、お盆は蓮の部屋の中にあった。


「あれ…?」


「お気遣い、ありがとうございます。後は自分で片付けますから」


「…あ、……うん…」



蓮の優しいところが好き。

でも今は……その優しさが、私を拒んでいるようにも思えてしまう。



「……真央さん?」


しばらくしても動かない私を不思議そうに見つめる。


「どうかしましたか?」


「いや…別に」



…自分でもよく分からない。


ただ、その手にもう一度触れたい…とか
ちょっとだけ抱きついてみたい…とか……。


そんなことを思う自分が恥ずかしくて。

でも、もし言ったら蓮はどうするかな、なんて考えて。



「…蓮」


「はい」


「…そ、そのですね……」


蓮を見上げて、だけど目があって勇気がしぼんで俯いて。

どうしようかと考えるうちに蓮の仕事の事を思い出し、慌てて顔を上げた。



「ご、ごめん、やっぱ何でもない。お仕事頑張ってるのに邪魔しちゃったね。…他に欲しいものとかある?」


私、自分のことしか考えてない……と改めて反省していると、蓮は眉間にシワを寄せて、ため息を吐いた。


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