愛、シテあげる。番外編
「――何ですか、それ」
わずかに怒気をはらんだ低い声に、胸の奥が音を立てて軋んだ。
さっきまで温かかった空気が、一気に凍りつく。
情けなくも涙が出そうになって、それだけはダメだと必死に堪えて笑顔を作った。
「ごめんね、もう邪魔しないから…」
「何で謝るんですか」
「…ごめ、」
「――邪魔です」
突き放すような言葉とは裏腹に、グイッと腰を引き寄せられて、痛いほどキツく抱き締められる。
状況が読めない…というか、苦しい……!
「ちょっ、離し、」
「イヤです」
「蓮、」
「イヤです」
「……」
なんなの、一体……。
混乱した頭が徐々に酸欠気味になって、足の力がスッと抜けた。
私の様子に気付いた蓮は、ようやく腕を緩め、くったりした私を優しく抱き寄せる。
……この腕のどこにこんな力があるんだろう。
汗臭さとは無縁に思える清潔な肌の匂いに懐かしさを感じていると、蓮は私の肩口に顔を擦り寄せた。