愛、シテあげる。番外編
「蓮、あそぼ!」


「いま本よんでるので、えんりょしておきます」


「えー」

「蓮、なんの本よんでるの?」


目立たないよう、わざと隅っこで本を読んでいたのに、わらわらと群がってくる女の子達に溜め息をつく。

放っておいてもらいたい。




僕は本を持ってその場を離れ、自分のお気に入りの場所に向かった。






その場所とは、庭にある、大きな大きな木の上。葉っぱがモサモサ生えているので、登ってしまえば見つかることはまずない。とにかく大きくて登りにくい木だから、先生も子供も登ってこれないんだ。


僕は周りに人がいないのを確認すると、本を持ったまま登り始めた。



ガサガサ、

ガサ、


「……ふぅ」



地面からおよそ7~8メートル地点。太い枝の上に座る。
息をつくと、緑の匂いが僕を包み込んだ。



誰も来ない、僕だけの場所。



思わずニヤリとしながら、本を開いた。





……そう、僕だけの場所“だった”。




「しゃいんのじょうずなうごかしかた……?」


「うわっ!」


耳のすぐ側、後ろから声がした。

本当に、唐突に。


僕は驚きながらも、落ちないようにバランスをとる。


しかもこの声、聞いたことがある。忘れるはずはない。

だって、


「……吉岡さん。なにしてるんですか」


「えーっと、蓮くんのストーカー?」


「……」


なんだこの子。





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