愛、シテあげる。番外編
「わたし、どうしてもおとこの人がこわいんだ。あ、蓮くんはもうこわくないよ。でもさっきはごめんね。はじめて会ったのにあんなこといって」


素直に謝られて、なんだか拍子抜けしてしまう。

きちんと前で手を合わせ、僕に首の後ろが見えるように頭を下げる様子に、少し好感を抱いた。
この子のお母さんは、きっとまともな人なんだな、と。


「もう、いいですよ」


「え?ほんと?」


「はい」


「わー!じゃあ、なかよくしてくれる?」



僕が頷くと、吉岡真央は満面の笑みを浮かべた。
そんなに嬉しいことか?

僕は先程の彼女の態度もあり、内心疑っていたが、だんだん馬鹿らしくなってきた。


この子は、人に媚びたり嘘をつく子じゃない。


僕の直感がそう告げる。



「男の子はこわいけど、蓮くんはすきだよ」


「はじめて会ったのに、ですか」

「うん、なんでだろうね。蓮くんはこわくないの。なんでかな?」


彼女は一瞬、顔に影をおとして『あの人とどこかにてるから?』と呟いた。


「吉岡さん?」



その表情が、明るい彼女とかけ離れていて、嫌な意味で少しドキリとした。



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