愛、シテあげる。番外編
「あ、真央でいいよ?」


「……じゃあ真央さん」


「蓮くんっておもしろいね」



ケラケラ笑う真央さんには、もう悲しげな表情の欠片もない。
彼女の笑顔に、何故か安心している自分がいた。


「蓮くんは、おしごとしてるの?」


「はい。少しですが、まさひこさんのおてつだいをしています」


「まさひこさんってだれ?」



僕は口をつぐんだ。お父さんです、と言えなかった。なんで、どうして。


「おとうさんのこと?」


「……はい」


認めてない訳じゃない。嫌いな訳でもない。それなのに、どうしてだろう。全然分からない。

俯く僕を不思議に思ったのか、真央さんは僕の顔を覗き込んできた。



「どうしたの」


「いえ、なんでもないです」




なんでもなくはないけど、この子に話すようなことじゃない。

ついさっき、最悪な初対面を迎えたばかりの、不思議な女の子に話せるわけがない。


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