愛、シテあげる。番外編
「蓮くんはお母さんがほしいの?」


「……まあ」


「そっか」


彼女は特に表情を崩すことなく頷いた。



お母さんがいないことに対して、同情でも軽蔑でもない感情を向けられたのは初めてで、少し嬉しかった。


「あの、こんなこといったら、蓮くんおこるかもしれないんだけど」


さっきまでの真っ直ぐな視線はどこへいったのか、目を忙しなく泳がせながら僕の顔を見る。

「なんですか」


「あ、えっとね、わたしも、まだママって呼べないの」


「……でもさっきは」


「ひとに話すときは呼べるんだけど、あとは、あんまり呼べないの」


困惑した表情で言葉を紡ぐ。

僕と同じように悩んでるんだなあと思っていると、彼女は真剣な面持ちになった。



「だから、その…おこらないでね?」


「はあ」


「えっと、だから、わたしが蓮くんのぶん、ママのことママって呼ぶことにする」



……はい?



< 76 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop